給与ファクタリングは、勤務先に対する個人の給与債権を譲渡することによって、資金調達をするファクタリングのことです。
しかし、この給与ファクタリングは、一時期社会問題になりました。
そこで、この記事では、給与ファクタリングの仕組みや問題点について解説するとともに、給与ファクタリングが貸付に該当する理由を解説します。
給与ファクタリングとは
給与ファクタリングとは、個人の給与債権を譲渡することによって、給料日前に現金化することです。
そんな給与ファクタリングは、一般的なファクタリングとは違う点があります。
給与ファクタリングは「貸付」に該当するため、行政庁(財務局長か都道府県知事)から貸金業登録を受ける必要があります。
しかし、ヤミ金業者が貸金業登録を受けずに、給与ファクタリングを行っているケースがあります。
ヤミ金業者は違法な手数料を設定したり、勤務先に訪問して違法な取立てをしたりするため、ヤミ金業者の給与ファクタリングサービスを受けるのは避けなければなりません。
給与ファクタリングの仕組み及び貸付に該当する理由とは
給与ファクタリングは、どうして貸付に該当するとされているのでしょうか。
ここでは、給与ファクタリングの仕組みを解説するとともに、どのような根拠で給与ファクタリングが貸付に該当するのかについて解説します。
給与ファクタリングは、基本的には次のような仕組みとなっています。
1.個人が持っている勤務先への給与債権をファクタリング会社に譲渡する
2.ファクタリング会社は、手数料を差し引いた金額を個人の口座へ入金する
3.個人は、勤務先から支給された給与(売掛金)をファクタリング会社に支払う
労働基準法24条1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めています。
そのため、使用者は直接労働者に賃金を支払わなければなりません。
つまり、給与債権を譲り受けたファクタリング会社は、直接使用者に売掛金を請求することができないため、給与債権の譲渡人から回収するしかありません。
その結果、形式的には債権譲渡であっても、実質的には貸付に該当するとされています。
以上の見解は、最高裁で示されています。
それゆえ、給与ファクタリングは実質的に貸付であるため、貸金業登録を受けずに給与ファクタリングをした場合、違法となります。
給与ファクタリングの問題点
給与ファクタリングは実質的に貸付であることから、業者は貸金業法に基づき行政庁(財務局長か都道府県知事)から貸金業登録を受けなければなりません。
しかし、さまざまな問題点が浮上し社会問題になりました。
ここでは、給与ファクタリングの問題点を解説します。
給与ファクタリングの主な問題点は、次のとおりです。
・貸金業登録を受けていないヤミ金業者が紛れている
・違法な金利を設定している
1.貸金業登録を受けていないヤミ金業者が紛れ込んでいる
給与ファクタリングは、個人が簡単に資金調達できたため、ヤミ金業者が参入してきました。
さらに、給与ファクタリングは実質的に貸付であるという裁判所の見解が公表されてからは、貸金業登録を受けていないヤミ金業者が目立ち始めました。
1度ヤミ金業者と取引してしまうと、自宅や勤務先まで取立てに来るなどの違法行為や嫌がらせをしてくるので、事前にヤミ金業者かどうかを見極めることが重要です。
2.違法な金利を設定している
ヤミ金業者が紛れ込んでいるということは、違法な金利を設定してきます。
そのため、本来調達できる資金が大きく減少してしまうリスクがあります。
給与ファクタリングは、とにかくヤミ金業者が入ってくる可能性が高く、2020年以降には逮捕者も出ています。
そのため、給与ファクタリングサービスをやっている業者は、ほとんどいないのが現状です。
給与ファクタリングにおけるトラブル相談
給与ファクタリングを利用したことで、ヤミ金業者と取引してしまったなどのトラブルに巻き込まれてしまった場合は、次のいずれかの窓口に相談してください。
・警察署
・弁護士などの専門家
・日本貸金業協会(貸金業相談・紛争解決センター)
・金融サービス利用者相談室(金融庁)
・消費生活センター
1.警察署
給与ファクタリングについては、ヤミ金業者や違法金利、違法な取立てなどがあった場合、相談に乗ってくれるので通報します。
2.弁護士などの専門家
ヤミ金業者と関わってしまった場合、警察よりも弁護士や司法書士などの専門家のほうが頼りになるかもしれません。
というのは、ヤミ金専門の弁護士のほうが、ヤミ金についてとても詳しいからです。
そのため、弁護士に依頼する際は、ヤミ金専門の弁護士に依頼してください。
3.日本貸金業協会(貸金業相談・紛争解決センター)
日本貸金業協会では、貸金業相談・紛争解決センターを設置しており、主に貸金業者の業務に対する苦情や紛争解決についての相談を受け付けています。
給与ファクタリングや多重債務についても、相談を受け付けています。
4.金融サービス利用者相談室(金融庁)
金融行政・金融サービスに関する質問や相談、意見などを受け付けています。
5.消費生活センター
商品やサービスなど消費生活全般についての相談を受け付けています。
まとめ
この記事では、給与ファクタリングの仕組みや問題点について解説するとともに、給与ファクタリングが貸付に該当する理由を解説しました。
給与ファクタリングは、ファクタリングではなく、実質的に貸付だと見なされています。
労働基準法24条1項の「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」という規定により、給与債権を譲り受けたファクタリング会社は、直接使用者に売掛金を請求することができないからです。
つまり、ファクタリング会社は、給与債権の譲渡人から回収するしかないからです。
このように給与ファクタリングには、さまざまな問題点があったのです。
この記事が、給与ファクタリングを知るための参考になれば幸いです。
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