売掛金と未収金の違いを皆さんはご存じでしょうか。 売掛金と未収金は資産であることや金銭債権であることなどの共通点があるため、その違いについては認識していない人も多いかもしれません。
しかし、売掛金と未収金には明確な違いがあります。
そこで、この記事では売掛金・未収金とはなにかを解説するとともに、売掛金と未収金の違いについても解説します。
売掛金とは?
売掛金とは、商品を販売した場合に後日その代金を受け取る権利のことで、売掛債権とも呼ばれます。
ここで言う「商品を販売した場合に、後日その代金を受け取る」取引のことを掛取引と言います。
また、売掛金の定義として重要なことは、商品やサービスを販売するなど営業活動を通して発生した債権のことを売掛金ということです。
例えば、お菓子メーカーが自社で製造したお菓子などの商品を販売して、後日代金を受け取る権利が売掛金です。
売掛金は後日請求し、代金を回収することで消滅します。
売掛金は、貸借対照表では資産に計上され、流動資産(1年以内に現金化できる資産)として計上されます。 売掛金には時効があり、一定期間の経過により消滅します。消滅時効は、売掛金の種類により1~5年と規定されており、詳細は次の通りです。
時効期間 | 売掛金 | |
1年で消滅 | 宿泊費・飲食料など | |
2年で消滅 | 月謝・教材費・製造業・卸売業・小売業 など | |
3年で消滅 | 診療費・建築代金・設計費 など | |
5年で消滅 | 上記以外 |
未収金とは?
売掛金が商品やサービスを販売するなどの営業活動を通して発生する債権であるのに対し、未収金は営業活動以外の取引により発生する債権のことです。
例えば、未収金には車両や備品などの固定資産や有価証券などがあります。
未収金は、売掛金と同じく貸借対照表上では資産に計上されますが、決算日の翌日から1年以内に回収される予定の場合は流動資産、1年を超える場合は固定資産に計上されます。
売掛金と未収金の違い
売掛金と未収金について解説しましたが、ここでは売掛金と未収金の違いについて解説します。
1.営業活動か否か
売掛金と未収金の最も大きな違いは、それぞれが発生する取引が営業活動であるか否かという点です。
つまり、売掛金が営業活動による商品やサービスの提供により生じる債権であるのに対し、未収金は営業活動以外の取引により生じる債権になります。
売掛金と未収金は、収益により発生したかどうかの違いがあるということです。
2.貸借対照表における計上の仕方
売掛金と未収金には、貸借対照表における計上の仕方にも違いがあります。
というのは、貸借対照表上、売掛金が回収期間にかかわらず流動資産に計上されるのに対し、未収金は回収までの期間が1年以内の場合は流動資産、1年を超える場合は固定資産に計上されるからです。
3.仕訳の仕方
売掛金と未収金では、仕訳の仕方が違います。
ここでは、具体例を示しつつ、売掛金と未収金の仕訳について解説します。
(1)売掛金の仕訳
売掛金は、営業活動において売上が発生したときに、使われる勘定科目です。
実際の仕訳では、資産である借方に売掛金を記入し、収益である貸方に売上を記入します(下記①)。
取引は、これで終わりではなく、取引先から売掛金を回収しなければなりません。
取引先から売掛金が普通預金に振り込まれた場合、売掛金を貸方に記入し、「普通預金」を借方に記入します(下記②)。
また、取引先が倒産などにより支払不能となる場合があります。
この場合、借方に「貸倒損失」を記入し、貸方に「売掛金」を記入します(下記③)。
このように掛取引では、2つの仕訳が必要になり、実際の仕訳は次のようになります。
①取引先に100,000円のサービスを提供し、代金を後払いとした。
借方 | 貸方 | |||
売掛金 | 100,000円 |
売上 |
100,000円 |
②後日、取引先から売掛金として100,000円が普通預金に振り込まれた。
借方 | 貸方 | |||
普通預金 | 100,000円 |
売掛金 |
100,000円 |
③取引先が倒産したことにより、売掛金が回収不能となった。
借方 | 貸方 | |||
貸倒損失 | 100,000円 |
売掛金 |
100,000円 |
(2)未収金の仕訳
未収金は、営業活動以外の取引において発生する債権で、土地などを売却したときに使われる勘定科目です。
実際の仕訳では、資産である借方に未収金を記入し、収益である貸方に「土地」と「売却益」を記入します(下記①)。
後日、土地の代金として未収金を回収すれば、取引は完了です(下記②)。
売掛金と同じく、未収金も回収不能になることがあります。
この場合も、売掛金と同様、借方に「貸倒損失」、貸方に「未収金」と記入します(下記③)。
①A社に200,000円の機械設備を売却し、後日代金を受け取る契約をした。
借方 | 貸方 | |||
未収金 | 250,000円 |
土地 |
200,000円 | |
売却益 |
50,000円 |
②後日、A社から未収金として、250,000円を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | |||
現預金 | 250,000円 |
未収金 |
250,000円 |
③後日、A社からの未収金の回収ができなくなった。
借方 | 貸方 | |||
貸倒損失 | 250,000円 |
未収金 |
250,000円 |
4.対となる勘定科目
売掛金と未収金は、後日支払いを受けるという点では同じですが、対となる勘定科目は異なります。
ここでは、売掛金と未収金の対となる勘定科目について解説します。
(1)売掛金の対となる勘定科目
売掛金の対となる勘定科目は、「買掛金」です。
買掛金とは、原材料や商品を仕入れたときに発生する債務のことで、未払いである(後日支払う)ことを表す勘定科目です。
売掛先と同じ金額(100,000円)で、買掛金の仕訳をすると、次のようになります。
①取引先から100,000円の原材料を仕入れて、後日代金を支払うことにした。
借方 | 貸方 | |||
仕入高 | 100,000円 |
買掛金 |
100,000円 |
②後日、取引先に売掛金として100,000円が普通預金に振り込まれた。
借方 | 貸方 | |||
買掛金 | 100,000円 |
現金 |
100,000円 |
(2)未収金の対となる勘定科目
未収金の対となる勘定科目は、「未払金」です。
未払金とは、営業活動以外の取引により生じる債務のことで、後払いで購入する場合に使う勘定科目のことです。
例えば、固定資産や消耗品などを購入する際に利用されます。
未払金の仕訳として、デスクを購入した場合の仕訳例を挙げると、次のようになります。
①A社から50,000円のデスクを購入し、後日代金を支払うことにした。
借方 | 貸方 | |||
消耗品 | 50,000円 |
未払金 |
50,000円 |
②後日、A社に対し未払金として、50,000円を普通預金で支払った。
借方 | 貸方 | |||
未払金 | 50,000円 |
普通預金 |
50,000円 |
まとめ
この記事では、売掛金・未収金とはなにか、また、売掛金と未収金の違いついても解説しました。
売掛金と未収金の最も大きな違いは、商品やサービスの提供などの営業活動により債権が生じたか否かになります。
つまり、売掛金と未収金が発生した取引に収益があったかどうかの違いということです。
このように売掛金と未収金では、貸借対照表上の扱いが違います。
売掛金は流動資産に計上されるのに対し、未収金は回収までの期間が1年以内か1年超により、変わってきます。
つまり、未収金については、回収までの期間が1年以内の場合は流動資産、1年超の場合は固定資産に計上されるということです。
この記事が、売掛金と未収金の違いを理解する際の参考になれば幸いです。
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